昭和30年代の頃を思い浮かべながら里山暮らしを夢見る一人の男の生き様をご覧ください。
その日は暖かな春の日だったと思う。
窓から入るやわらかな陽射しの中で私は目覚めた。
カシャッ カシャッという畑を打つ鍬の音が聞こえた。
当に幼子。
おそらく3歳ごろだったと思う。
たぶんいつもの様に、洋服を着てその音のする畑へ向かった。
家は小高い山の裾野に在って、その下の方に畑と田んぼがあった。
家からの坂道を降りていくと、すぐ脇の畑に母と祖母がいた。
二人は鍬を打つ仕事を止め、満面に笑みを浮かべ幼い息子あるいは孫を迎えた。
私の記憶から決して消えることの無い幼い日の思い出である。
(57歳)
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